日本の書画は修復を繰り返し、長い歴史を刻んできたのです。 「ここまでなったら、修理なんてできないだろう」とあきらめないでください。 大丈夫です。ほとんどの場合は修復できます。 以前、どこかへ修復を依頼しても、「できない」と断られたことがあるかもしれません。 でも、まだあきらめないで、 もう一度、私どもへご相談下さい。
天袋の修復前の様子です。中央部が大きく裂けています。補強のための下張りの和紙が粗悪で襖紙の劣化とともに表面の張力に耐えられなくなって自然に裂けたようです。
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まず、襖椽をはずします。 この段階で、作品が崩壊したり、色あせたりして、台無しになってしまうこともありますから、細心の注意が必要です。 過去に手荒な修理をされていると、大変な作業になります。 場合によっては、それが原因で修理できないこともあります。 毎回、必ずきちんとした修理をすることが、作品を長く保つためには重要です。 |
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襖紙の裏側に付いている下張り紙をはがします。
まだまだ、細心の注意と根気の要る作業が続きます。 業者によっては、技術力不足のために、裏紙をはがさないままにすることがあります。 |
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裂け目をきっちり合わせ、裏打ちをします。この合わせの作業をきちんとしないと、後で引きつりができたり、再び裂けたりします。 |
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さらに補強の裏打ちをしてから、仮張りで乾かしてめくったところ ここまでくれば、一安心です。 |
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元の位置に張り戻します。 |
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【作品データ】 |
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写真だけで見ると、破れがあるくらいで、大した問題はなさそうに見える例です。 |
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作品が痛まないように、これらの悪い修復部分をすべて取り除き、本来の作品の姿にできるだけ戻します。もちろん、すべて洗いを行い、裏打ちをやり直し、裂け目を補強します。さらに、この作品は紙の表面の劣化が激しく、襖として常に光と空気に晒されることによって、さらに痛みが進むので、収納と保存に適したを考慮して屏風に仕立て直しました。 | |
【作品データ】 |
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鳥の子間似合紙(雁皮紙料と泥土を混ぜて漉いた紙)に緑青、朱、胡分、金砂子などで絵が描かれています。 中央2枚の襖の下部の白い部分が破れて欠落していました。(山の上部や、裾の白っぽい部分は金砂子です。本金は、何年経過しても輝いています。)全体に茶黒く変色し染みもあり、襖紙が弛んで、強度が無くなっていました。 | |
襖椽を外して絵が描かれた襖紙を襖骨地からめくり取り、水洗浄を行いました。長年の煤埃を洗い流した結果、絵の具の色も鮮やかさが戻り、紙も少し白くなりました。欠損部分は同質の紙で補い、全面の裏打ちをやり直し補強しました。絵を貼り戻すにあたり、どうしても元の寸法よりも5㎜ほど小さくなってしまうので、その分襖椽の幅を太く新調しました。 | |